安全なニュージーランドがモスク大量虐殺テロの舞台に選ばれた理由
2019年3月15日、ニュージーランドの南島最大の街クライストチャーチにて2つのモスクが襲撃され、主にムスリムの人が49人殺されました。この規模のテロがニュージーランドではこれまで起こったことはありませんでした。
犯人はオーストラリア生まれの28歳オーストラリア人、Brenton Tarrantです。彼は2017年からNZのダニーデンに住んでいて、そこで射撃クラブに所属していました。NZは基本的に銃規制が強い国なのですが、免許があればライフルの所有は可能です。ただ、今回の件でさらに銃規制は厳しくなるでしょうね。 オーストラリアでの仕事はジムのインストラクターで、かなりのワークアウトマニアだったそうです。オーストラリアでジムのインストラクターとして働いた後、祖母の遺産を相続し、彼は世界を旅行し始めます。イスラム国家であるパキスタンに行ったこともあり、その時はフェイスブックにて「優しい人達が溢れる国だった」とコメントをしていたのですが…
彼は8chanという掲示板の常連でした。8chanというのは、英語版の2ちゃんねるのような掲示板である4chanからさらに派生したものです。日本の2ちゃんねる(今は5ちゃんねる)と同じように、4chanも思想的にはやや右翼よりの人が多かったのですが、その4chanの住人達にとっても思想的に偏りすぎで、ヘイトに溢れる人達が隔離されるために8chanが作られたというのが簡単な歴史です。そこで彼は色々な人と意見を交換し、極右過激派に染まっていきました。 彼の尊敬する人の中には2011年にノルウェー・オスロで起きた大量殺人犯も含まれ、犯人とはオンラインで連絡のやり取りもしていたらしいです。
彼は8chanにてネットのルールのようなものを学びました。自分の白人至上主義的な価値観をどうやって世界に広げるか、もっとも効果的な方法を考えたのです。その答えがまずモスク襲撃でした。8chanに70ページ以上に及ぶ声明をアップした後、彼は行動に移します。 やり方がノルウェイのテロリストとそっくりですね。虐殺の様子をライブストリーミングで中継しつつ、人気のあるユーチューバーの名前を出すことで、そのユーチューバーが自分との関連を否定するために彼の名前を動画に出し、それでさらに自分の名前が売れるという、かなり計算された行動を取っています。 自分の出した声明が事件後に読まれることを意識しているので、彼の声明は長くてもかなり読みやすく書いてあります。ネット上のスラングやジョークも多用されているため、普段そういうものに触れない人が見ると、必要以上に深い意味があるのかと勘違いしてしまうような文章(いわゆる「釣り」)になっていますが、要するに彼が何を言いたいかと言うと単純で、移民とムスリムに反対ということです。
今回ニュージーランドがテロの舞台に選ばれたわけですが、犯人の気まぐれの要素もかなりありますが、ニュージーランドでテロをする事自体にも意味が込められています。 このテロを通してBrentonが伝えたいことは2つ。
「白人はもっと自分の国を守るべき。」
「移民は自分の国に帰れ。」
です。
ニュージーランドは世界でトップ3に入るくらい安全な国で、今のところはまだ白人国家です。 世界でトップクラスに安全な国は他に日本やスカンジナビア半島の国々(ノルウェイ、スウェーデンあたり)があります。 そんな安全性に定評のあるNZでムスリムをターゲットにしたテロを起こすことによって、犯人は「世界のどこにも安全な場所なんてないんだぞ(一番安全な国ですらお前らは命を狙われるんだ)」というメッセージをムスリム達に送ったわけです。 おそらくノルウェイ等でもよかったと思うのですが、すでに2011年に先輩がやってますし、日本は白人国家じゃないから、日本でテロを起こしても「俺たちの国から出ていけ」というメッセージが消えちゃいます。だからニュージーランドがターゲットに選ばれたんですね。すごい迷惑。
Brentonは自分はオーストラリア生まれだけれど、ルーツはヨーロッパにあり、これはヨーロッパ人とイスラムの闘いだと言います。このままイスラム教徒を放置していると、将来白人の子孫が安心して暮らせなくなる、だからムスリムたちは自分たちの国(白人国家)から出ていけ、という主張をしています。
そんなこと言ったらアメリカは元々インディアンのものだし、オーストラリアはアボリジニーのものだし、ニュージーランドもマオリのものなんですけど…
残念ながら、こういう変な人は社会に一定数存在しますし、今までなんの犯罪歴もない人を監視することはできません。だから今回のはどこで起こるにせよ防げなかったんじゃないかと思います。人災ですけど、自然災害のようなものです。ただ、銃規制は見直す必要がありますし、非常に難しいテーマですけど、ネット上のヘイトスピーチを何とかしないと、同じようなテロがまた起こるでしょうね。
この犯人も尊敬するにヒトラーや白人至上主義のメンバーを挙げていて、言い方は悪いですけど、中二病をとことんこじらせてしまった、つまらない量産型の人種差別テロリストになっています。それでも今14歳とかの子供がこの人の犯行声明を読めば、100人に1人くらいは影響されて白人至上主義になり、そんな人が100人集まればそのうちの1人はまた同じようなテロを計画するでしょう。そしてテロを計画する人が100人いれば、そのうちの1人は実際に行動に移しちゃったりするでしょうね。
ネットに毒されてテロリストになってしまう人達に対抗するにはどうすればいいでしょう? 私は月並みですが、ヘイトをこじらせる人達に対しては愛で対抗するしかないと思います(笑) もっとこの人が移民と交わる時間が多く、ムスリムの友達がいたりすれば、彼のメンタルも違っていたかもしれないし、私のような移民がある程度努力をして、現地の友達ともっと交流することで、もしかしたらある程度は防げたのかもしれません。
今回の事件は南島で起こりました。私は北島のオークランドに住んでいるのですが、金曜日はこちらでモスクに行っていたので、犯人の気まぐれ次第では私も殺されていたのかもしれないんですよね。恐いです。
参考サイト
nymag.com/intelligencer/2019/03/the-christchurch-shooters-manifesto-isnt-in-code.html
www.theatlantic.com/technology/archive/2019/03/the-shooters-manifesto-was-designed-to-troll/585058/
www.nzherald.co.nz/nz/news/article.cfm?c_id=1&objectid=12213315
こんな人が書いています。
- アラサーでNZにワーホリに来ました☆ 頑張って外国で生活してみます☆
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