NZ人とアメリカ人の根底にある価値観の大きな違い 自由と公平さ

NZ人とアメリカ人の根底にある価値観の大きな違い 自由と公平さ

 

とあるアメリカ人の歴史学者がニュージーランドに旅行に来た時に、違和感を感じたそうです。 ニュージーランドもアメリカも、同じイギリスの植民地から出発した国なのに、みんなが共通して持つ精神、根底にある価値観がずいぶん違うのではないかと。 彼はその理由を探って本にまとめました。 その歴史学者の名前はDavid Hackett Fischerです。 デビッドさんの本は読んでませんが、その本について書かれたコラムが面白かったので、勝手に和訳の練習に使わせてもらいます☆

デビッドさんはNZもアメリカも、元はイギリスの植民地で、大量の移民を受け入れてきた歴史を持つ、開かれた民主主義の社会なのに、この二つの国の国民が根底に持つ価値観に大きな違いがあると気付きました。

アメリカ人が最も大事にするのは「自由で束縛されないこと(Freedom and Liberty)」。 アメリカの政治も、この「自由」という言葉の意味が議論の中心となってきました。

 

一方でニュージーランド人が社会を作る時に重視したのは「公平・公正であること(Fairness)」。 アメリカではこの「公平であること」という原則に対して意見が真っ二つに分かれます。

 

この二つの国の価値観の違いはどこから来るのでしょう? デビッドさんは「一番の原因は国ができたタイミング」と言います。

 

アメリカはイギリス帝国の植民地でした。 その頃にアメリカに住んでいた移民達は、常にイギリス帝国と「イギリス人としての権利」をかけて戦っていました。 (元イギリス出身の)移民達は「自分たちもイギリス人なんだから、国民としての権利を持ってるはずだ!」とイギリスに言いますが、イギリスは彼らの主張を否定します。その後、最初のイギリス帝国はアメリカが独立した時に一度死にます。 アメリカの歴史は、「解放されるための闘い」の期間が多いんですね。

 

ニュージーランドはその後、イギリスがとても栄えていた“第二イギリス帝国時代”にできました。この時に海外に移住したイギリス人達は、本国にいるイギリス人達と同等の権利が与えられました。 アメリカに移住したイギリス移民であるアメリカ人達が闘って勝ち取らないといけなかったイギリス国民の権利を、キーウィは特に苦労もせずにタダで貰ったんです。

 

アメリカ人の悩みが帝国が暴君のように振る舞うことという、かなり深刻な悩みであったのに対し、キーウィ達の悩みは帝国が偽善的だったこと。

ニュージーランドができた頃のイギリスは、「公平さ」等の大切さを説くのにも関わらず、イギリス自身の内政はそういった価値観からほど遠いものだったようです。 そこでキーウィは、「それならニュージーランドをそういう国にしよう」と思いました。 キーウィが「公平・公正さ」を大事にするのは、こういった流れがあったからです。

その後、イギリスやヨーロッパの国が福祉国家を目指すのに真っ向から反発して、平日昼間から銃乱射事件が絶えなかったり、学生ローンを払えない人が多すぎるためか学生ローンは自己破産しても消えない制度に変わったり、未だにお金持ちのエリアを黒人が歩くと通報されたりと、どんどん殺伐としていったアメリカ社会。

多くの保守派のアメリカ人は、「公平さ」という原則を、自分達が大切にしている「自由」や「資本主義」そして「国家の安全」を脅かすものとして見ています。 格差に対して肯定的なアメリカ人は、人生が不公平なものということを受け入れているようです。 逮捕されたゴーン社長は年収が20億円で少ないと嘆いていましたが、アメリカの社長は100億円とか貰っている人もいるらしいですね。

私はずっと「どうしてアメリカって先進国なのに、日本みたいに国民皆保険制度がないんだろう。」と疑問に思っていました。 ニュージーランドも歯の治療以外の医療費は診察代以外は基本的に無料ですし、怪我の治療は外国人でも無料です。先進国ならこれが普通だと思います。 アメリカの場合は民間の保険に入っていないと盲腸で100万円とかかかります。その民間の保険会社も出し渋りがしょっちゅう問題になっています。保険料も月に10万円とかするので、無保険者の数が5000万人くらいいるらしいです。その人達は何があっても病院には行けません。行ったら治療費で破産するからです。 ザ・格差社会という感じですね。

 

オバマ大統領が「これはさすがにまずいだろう」ということで「国民皆保険制度」をアメリカに導入しようとしたのですが、かなり大きなバッシングにあったそうです。そのうちの1つが「保険に入らない自由を奪うのか」というものでした。私はこれを新聞で読んだ時、絶句したんですけど、「みんなで少しずつ負担して、ちょっと不自由になるけど、より安心な社会を目指そう」というのは多くの(共和党の)アメリカ人にとってはタブーだったようです。ちなみにニュージーランドは職種の危険度に応じて国民皆保険制度に支払う金額が変わります。怪我をしやすい仕事の人は多め払うというわけです。アメリカ人にとっては「少しの自由と引き換えに得られる安心」よりも「勝手に野垂れ死ぬ自由」の方が大事なんですね。こういう社会だと、事故に遭った時、弁護士代を負担できる経済力を持った人は大金を手にすることができますが、お金を持ってないほとんどの人は泣き寝入りをすることになります。

 

あれだけ銃乱射事件が頻繁に起こっているのに銃を捨てられないのも、銃が自由の象徴だからでしょうか? 

 

うーん、私はニュージーランド派だなぁ…☆ 野垂れ死ぬ自由とか、保険に入らない自由とか、銃を撃つ自由とか…そんなに大事なこと? なんだか少しだけアメリカ人達の考え方が理解できた気がします。

 

翻訳元

www.washingtonpost.com/entertainment/books/fairness-and-freedom-a-history-of-two-open-societies-new-zealand-and-the-united-states-by-david-hackett-fischer/2012/01/24/gIQAsRcYKR_story.html