ワイタンギ条約とは Q&A ~全力で分かりやすく解説します~
- 2020.02.15
- NZ役に立つかもしれない情報
いきなりですがクイズです。
ニュージーランドの公式言語はどれでしょう?
1.英語
2.マオリ語
3.手話
4.英語とマオリ語
5.マオリ語と手話
6.1~3全部
答えは…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
5番! マオリ語と手話です。 実は英語は公式言語ではないんですね~☆彡
どうしてでしょうか? これはワイタンギ条約が関係しています。
ニュージーランドにワーホリなり留学なりで来る人、ワイタンギ条約って何? 何が問題なの?って興味が出てくる人もいると思います。 キーウィの人たちに「ワイタンギ条約って何が問題なの?」って聞くと大抵は「マオリ族とイギリスとの間で結ばれた条約で、英語版とマオリ語版があって、翻訳に違いがあるせいで色々と問題が起きたんだ」という説明をされると思います。
今日はワイタンギ条約について私がリサーチしたことをなるべく分かりやすいQ&Aにしました。
ワイタンギ条約って何? という人のためのQ&A
Q1 ワイタンギ条約って何?
ワイタンギ条約というのは、1840年にニュージーランド先住民マオリ族とイギリス女王の間で結ばれた条約で、白人とマオリ族が一緒に住んでいる今のニュージーランドという国家の基盤でもあります。
「マオリ族はイギリス人としての権利を得て、女王から守ってもらうのと引き換えに、ニュージーランドはイギリスの植民地になる」という内容だと多くの人に認知されていますが、間違いです。詳しくはもっと後で。
Q2 ワイタンギ条約の前にはニュージーランドはなかったの?
ありました。が、独立国家としての認識はされていなかったので、1835年(ワイタンギ条約が結ばれる5年前)に一度、「独立宣言」を出しています。1835年にニュージーランドはオフィシャルに「マオリ族の支配する国家」になりました。
Q3 独立国家宣言してたのに、どうしてあえてその5年後にワイタンギ条約を結んでイギリスの植民地になったの?
ここがポイントなんですけど、マオリ族は「ワイタンギ条約を結ぶこと=イギリスの植民地になること」とは思っていなかったんですね。なぜならワイタンギ条約のマオリ語版では一言も「ニュージーランドはイギリスの支配下になる」とは書かれていないからです。
マオリ族の文化では、「自分の部族の人間は自分たちで管理する」というのが常識でした。マオリ族と一口に言っても、何十種類もの部族がいて、それぞれの部族がそれぞれのリーダーによって率いられて生活していました。他の部族の人間が何か悪いことをしたら、直接その人間に何かをするよりも、その人間が属している部族のリーダーに話して、問題を解決してもらっていたんです。 独立宣言を出した当時、ニュージーランドにはすでにヨーロッパからの移民が多く(といっても2000人ほど。ちなみにマオリは9万人ほど)住んでいました。彼らヨーロッパ人の中には、ティカンガと呼ばれるマオリ族のルールに従わずに密漁や殺人などの犯罪行為を続ける悪い人達もたくさんいて、マオリ族はそういう悪いヨーロッパ人たちの扱いに手を焼いていました。
マオリ式の考えでは、マオリ族でないヨーロッパ人の犯罪に対してアクションを起こすべきのは自分たちではなく、ヨーロッパ人のリーダーです。イギリス女王が責任をもって犯罪者の面倒を見てくれるようになればいい。これがマオリ族達がワイタンギ条約にサインをした背景です。
「ヨーロッパ人の犯罪者達の面倒は女王が見る。イギリスの女王が責任をもってヨーロッパ人を取り締まる。」 これがマオリ族達にとっての「ワイタンギ条約」でした。
Q4 ワイタンギ条約は英語版とマオリ語翻訳版とにどんな違いがあるの?
ワイタンギ条約には4つの項目があります。大きな違いがあるのは1つ目と2つ目です。
第1条
(英語版)
「マオリ族はイギリスにニュージーランドの支配権を問答無用で渡す。」
(マオリ語版)
「マオリ族はイギリス女王に、ニュージーランドにいるヨーロッパ人達の統治権を渡す。ニュージーランドは独立宣言の通り、これからもマオリ族のもの。」
<違い>
マオリ族はあくまでもイギリスの女王がニュージーランドにいるヨーロッパ人を管理する権利を渡しているつもりだけれど、英語版ではニュージーランドのすべての支配権がイギリスのものという文になっています。
第2条
(英語版)
「マオリ族が望むなら土地や森やビーチを所有できることを約束する。土地を売りたい時は、イギリス政府にだけ売ることができる。」
(マオリ語版)
「女王は土地を含めてマオリ族が大切にしているものすべてをマオリ族が持つことに同意する。マオリ族はイギリス女王に土地を買う権利をあげる。」
<違い>
同じようなことを書いているように見えますが、マオリ語版ではあくまで「女王にも土地を買う権利をあげる」と書いているのに、英語版では「マオリ族は女王にのみ土地を売ることができる」と売る相手をイギリス限定にしているところですね。
つまり、英語版とマオリ語翻訳版ではもう全然別のものになっていたわけですね。
Q5 どっちのバージョンが本物なの?
マオリ語翻訳版です。 500人ほどいたリーダーのうちのほとんどはマオリ語版の条約しかサインしていません。一部のマオリ族のリーダーは英語版にサインしたようですが、彼らはマオリ語で説明を受けていたので、英語版の意図を完璧に理解している人はいませんでした。
Q6 そもそもマオリ族に土地を売る意図はなかった?
マオリ族にとって土地というものはある意味神様に近いようなものであり、「土地を所有」という概念自体がなかったんですね。私たちが空気をお金じゃ買えないもの、って思うのと同じような感じでしょうか。 なので、部族のリーダーがヨーロッパ人達に「ここ使っていいよ~」って土地を貸すことはありましたが、あくまでも一定期間その土地を使用する(住んだり畑にしたりする)権利をあげただけであり、その土地に何をしてもいいというわけではなかったんです。 つまり、最初からこのワイタンギ条約はちょっとマオリ族にとっては「わけわからないもの」だったんです。
Q7 150年以上も前に結ばれたワイタンギ条約が、どうして今も問題なの? 何が問題なの?
ワイタンギ条約の問題点としてよく言われるのは翻訳の違いですが、本当の問題は翻訳ではなくて、条約自体がずっと無視されてきたことです。例えばですが、最低限英語版の方の条約だけでもしっかりと守られていれば、ここまでマオリ族が社会の貧困層に落ちることもなかったし、マオリ語が消滅の危機に陥ることもなかっでしょう。イギリスはワイタンギ条約が結ばれた直後から条約違反をしまくって、システマティックにマオリから土地を奪い、文化を奪っていきました。
思いのほか長くなって疲れたので、条約後にマオリ族がどれだけひどい扱いを受けたかについてはまた今度書きまーす☆彡
こんな人が書いています。
- アラサーでNZにワーホリに来ました☆ 頑張って外国で生活してみます☆
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